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放射線イメージング

2017年10月27日 (金)19時58分PM

お疲れ様です。開発を担当している森です。

 

今回は、人の目で直接見ることのできない、物理的・化学的な現象や試料の状態などを可視化する方法について、いくつかご紹介したいと思います。このテーマについて考えたとき、学生の頃に取り組んでいた研究を思い出しました。火炎内部の燃料流体の挙動を可視化することによって火炎の浮き上がり現象を解明する、といった内容でした。

 

例えば流体の可視化方には、レーザーシートを用いた粒子画像流速測定法(Particle Image Velocimetry, PIV)があります。流体に追従する粒子(トレーサー)をレーザーシートで可視化し、それをカメラで撮影して、粒子の動きを測定、解析するというものです。近年ではコンピュータの発達によって、数値シミュレーションによって精度よく解析することも可能になってきました。身近なところでは、天気予報や台風の進路予報などの精度が向上していることなどが挙げられると思います。

 

ところで昨日は会社で健康診断がありました。皆さんご存知の胸部のレントゲン撮影、これはX線が人体を透過する特徴を利用した可視化法で、放射線イメージングと呼ばれています。話はそれますが、健康診断で行われる採血が私は非常に苦手です。最近、一滴の血液でがんを診断するという内容の研究が始まったと聞きました。ぜひとも早期実現を・・・。

 

ここから、放射線イメージングによる可視化の例を挙げてみます。

 

先ずX線CTですが、CTはComputed Tomographyのことで、対象物を断層撮影して再構成し、内部構造を可視化する方法です。例えば産業用途では、非破壊検査や食品中の異物検査などに用いられており、近年では3DマイクロフォーカスX線CTといって、焦点サイズ数μmオーダーの空間分解能で、内部を高精度かつ立体的に観察できる装置が多く市販されています。

 

熱変性による損傷を嫌う生体試料の観察には、軟X線を用いた軟X線顕微鏡が挙げられます。分解能は光学顕微鏡と電子顕微鏡の間、数10nmオーダーの高い分解能で観察することができるようです(最近、生きたままの生物を観察することが難しいとされていた電子顕微鏡で、それが可能になったと聞きました)。

 

試料中の元素分布を知る方法として、エネルギー分散型X線分光器(EDS)による元素マッピングも、X線を利用したものです。電子ビームを走査した試料から放出されるX線を検出器で捉え、スペクトルを得ます。私も、日頃からよく使用しています。

 
医療用途に話を移しますと、X線CTはもちろんですが、他には核医学検査に用いられる陽電子放出断層画像法(Positron Emission Tomography;PET)、単一光子放射断層撮影(Single photon emission computed tomography;SPECT)などが挙げられます。これらは分子イメージングとも呼ばれます。

 

核医学検査は、目印となるラジオアイソトープ(ごく微量の照射線を出す薬)を体内に投与し、特定の臓器から発生するガンマ線をガンマカメラで検出し画像化することで臓器などの働き具合を調べるもので、臓器などの形や大きさ、位置を調べるX線検査(CT)やMRI検査とは目的が異なります。PETは植物研究にも応用されているようで、植物の水分の動態を調べる事ができるそうです。

 

最近では、光超音波イメージングと言って、レーザパルス光を生体に照射して、血管の状態を立体的にリアルタイムで観察することができる技術の研究が進められているようです。低侵襲、低被爆の検査や治療方法が求められている昨今、他にも様々な研究が進められているようですが、ゴールドスタンダートと言われるX線にはかなわないようで、X線に代わる技術が開発・実用化されるにはまだ50年はかかるだろうと、ある研究者から聞いたことがあります・・・。

 

まとまりのないお話をしてしまいましたが、我々は、放射線イメージングの分野では長年の実績があり、電子線源やコリメータなどの開発実績も多々あります。お気軽にご相談ください。

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