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含浸型陰極について

2016年09月30日 (金)17時34分PM

開発を担当している森です。

 

昨日、東京ビッグサイトで開催されている展示会に行ってきました。
素材や加工技術、計測技術を主とした展示の他、食品製造にまつわる技術や商品の展示もありましたので、普段は参考にしなかった食品製造業界の視察も行い、刺激を受けてきました。例えば厨房機器などは、基本的な技術は昔から変わっていないようですが、コンスタントに需要はあるとのことです。息の長い技術=優れた技術、と捉えることができそうです。逆に言えば、何か技術革新が起きれば、一気に流れが変わるかもしれませんね。

 

以前、照明機器(ランプ)に使用する電極部品として、弊社で作製している含浸型陰極の一例を紹介させいただきましたが、写真のみでしたので今回はその内容について少しご説明いたします。

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熱陰極として使われる材料には下記のとおりいくつかあり、いずれも電子を多く放出させるための工夫がなされています。工夫としては、仕事関数を小さくする、動作温度を高くする、の二点です。

 

1.金属陰極

 
2.単原子層陰極

 
3.酸化物陰極

 

1は、単純にW(タングステン)やTa(タンタル)などの融点の高い材料を、高温に加熱して使用します。例えばWの仕事関数は4.5eVです。

 

2は、WにThO2(酸化トリウム、トリア)を微量添加したものが一般的と思われます。真空中で加熱しThO2を還元して使用します。ThO2の仕事関数は2.6eVです。

 

3は、熱陰極の中で最も効率が良く、今回ご紹介させていただく含浸型陰極はこの類です。多孔質のタングステンに、Ba(バリウム)系の易電子放射物質を含ませたもので、低い仕事関数(1.5eV程度)と寿命が長いことが特徴です。加えて、弊社の含浸型陰極は、基体となる多孔質タングステンを高温で焼結していますので、使用中の変形が少ない、とお客様より評価を頂いております。
この陰極は大気中の水分を吸収しやすことから、実使用において陰極の特性を最大限引き出すための技術は、お客様のノウハウによるところが大きいようです。この点については、我々はいくつかの用途で実績がありますので、ご相談いただければご提案可能です。

 

今回ご紹介させていただいた技術は照明業界で培ったものですが、現在、分析関係の業界での応用を検討しており、詳しいお話はできませんが新規のテーマとして開発を進めているところです。

 

我々は引き続きこの技術を多方面に展開したいと考えており、延いては技術革新のきっかけとなれば幸いです。 ご相談をお待ちしております。

 

 

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