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タングステンのアセンブリ事例

2021年04月02日 (金)20時35分PM

技術課の川上です。今回はアセンブリ事例の紹介致します。

タングステンのフィラメントを他部材に接続する案件に於いて課題となるのが熱脆化です。タングステンは高強度材として知られていますが、延性-脆性遷移温度が高く、高温で再結晶して著しく脆化してしまいます。基本的に1300Kで1次再結晶化、1800Kで2次再結晶化が始まり、2400K付近で完全再結晶化が完了します。1次再結晶程度であれば加工は可能ですが、2次再結晶化が始まっていると冷間での加工はほぼ不可能となってしまいます。強度の観点から見ると熱を掛けなけれ良いという事になりますが、フィラメントなど光源として使用される場合は発光により高温になるので、フィラメントの段階で熱処理をして結晶成長させておかないと点灯時にデフォームを起してしまうので、熱処理によりリードを含むフィラメント全体が再結晶している状態になります。今回の事例でも溶接による接続方法が真っ先に上がりましたが、溶接するには部材を溶かさなければならないので、融点以上なってしまう=2次再結晶完了しているので、ちょっとした衝撃で破断してしまうのです。用途によってはこの熱脆化が致命的な欠点となってしまう事があります。

再結晶化による破断面拡大写真

今回の事例では、タングステンフィラメントと端子となるモリブデン棒との固定でした。その製品は端子のモリブデンをネジ締め固定する為に負荷が掛かかり、フィラメントのリードそのままだと破断してしまう為、フィラメントよりも太いモリブデンに接続する要求が有りました。

とりあえず物は試しと、リードをモリブデン棒に直接溶接してみたり、サブコイルを入れて間接的に溶かしてみましたが、やはりタングステンを溶かすと熱脆化でちょっとした衝撃で折れてしまいます。タングステンよりも融点の低いモリブデンの方を溶かしてもみましたが、モリブデンの融点でもフィラメントのリードが再結晶してしまい強度不足。さらに高融点ロウ材を使用する方法は異種金属が不純物となってしまうのでNG。熱を掛ける手法は難しいと判断し、モリブデン棒にスリットを入れて、そこにフィラメントのリードを挟んでカシメてみましたが、ワイヤーが細い為、引張強度が得らずすっぽ抜けてしまいました。最終的にはモリブデン棒に穴を空けて、リードを挿入し、モリブデン棒を加熱しながらのカシメ方法となりました。この方法だとフィラメントのリードに与える熱影響が最小限で済み、モリブデン棒を加熱する事で柔らかくし力学的な変形と、モリブデンの内壁を若干溶け込ませる溶接が可能となりました。これにより引張強度は50Nを超え、輸送や使用時の衝撃にも耐えられる構造となりました。

完成品外観(フィラメントとモリブデン棒のアセンブリ)
カシメ部拡大

この様に、アセンブリに於いても、使用目的と用途によって様々な方法が有ります。今回の例は異部材の使用が制限されていたのでこの様な変則カシメになっていますが、熱脆化の懸念が無い使用状況目的での溶接であればTigやレーザー、抵抗溶接などの実績とノウハウがございますので、アセンブリでお困りの事が有ればお気軽にご相談下さい。

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